┌────────────────────────────────┐ │これは森てるおのホームページ用に参考用として掲載したものであり、│ │誤字、脱字等がある場合があります。正確なものを必要とする場合は、│ │西東京市ホームページ、または西東京市役所でご確認ください。   │ └――――――――――――――――――――――――――――――――┘ 請願第2号 上限金利の引き下げ等により、中小零細事業者・消費者等の健全な生活       を守り、多重債務問題を根絶するため、「出資の受入れ、預り金及び金利       等の取締りに関する法律」及び「貸金業の規制等に関する法律」の改正       を求める請願(平成18年8月17日受理) 提 出 者 千代田区霞が関1-1-3                 第二東京弁護士会 会長 飯 田   隆                 東京弁護士会   会長 吉 岡 桂 輔                 第一東京弁護士会 会長 奈 良 道 博 紹介議員  浅 野 高 司  遠 藤 源太郎  二 木 孝 之       佐々木 順 一  高 梨   功  森 下 典 子       猪 野   滋 趣 旨  西東京市議会が、国会及び政府に対し、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締り に関する法律」(以下、「出資法」といいます)及び「貸金業の規制等に関する法律」 (以下、「貸金業規制法」といいます)を下記のとおり改正するよう求める意見書を提 出することを採択していただくよう請願いたします。                    記 1 出資法第5条の上限金利を、少額短期貸し付けなどの例外を設けることなく一律  に利息制限法第1条の制限金利まで引き下げること。 2 貸金業規制法第43条のいわゆる「みなし弁済」規定を撤廃すること。 3 出資法における日賦貸金業者及び電話担保金融に対する特例金利を廃止すること。 4 保証料名下での出資法及び利息制限法の脱法を禁止すること。 理 由 1 はじめに  2003年(平成15年)7月、やみ金融対策法(貸金業規制法及び出資法の一部を改 正する法律)が成立し、その附帯決議において、貸金業規制法及び出資法の上限金利 の見直しをやみ金融対策法の施行後3年を目途に行うことが定められています。その 具体的期限が2007年(平成19年)1月ごろになることから、金利の見直し等の法改 正に向けて、今、極めて重要な時期を迎えています。 2 多重債務問題の深刻化  2000年、2003年に貸金業規制法及び出資法の改正等、貸金業に関連した法改正がな され、それぞれ一定の成果が報告されています。しかし、依然、多重債務問題は深刻 さを増し、自己破産の申し立て件数は、2003年には24万2,357件に達し、2004年は 21万1,402件、2005年も減少はしたものの19万件を超えているなど、高水準にあり ます。また、破産には至っていないものの、そのおそれのある人は100万人とも200 万人とも言われています。そして、経済的理由による自殺者は約8,000名(2004年度 は7,947人)に上り、全体の自殺者数に占める割合もここ数年で急増しています。  このように、自己破産等の法的救済も図り得ないものも含めると多重債務者の数は、 相当数に上ると推測されます。  さらに、このような多重債務問題が、ホームレス、離婚、児童虐待、犯罪等の被害 を引き起こす要因となっているケースも少なくなく、多重債務問題は、依然社会問題 として極めて深刻な状況にあります。 3 多重債務問題の要因は高金利  もともと利息制限法は、経済的弱者の立場に置かれた人々を暴利から保護する強行 法規であり、その定めを超過する利息は無効と定められているところ、貸金業者は出 資法の上限である29.2%を超えた場合にのみ処罰されるため、利息制限法を超過しつ つ、出資法の刑罰金利未満で利息制限法を超過する利率による貸し付けがはんらんし ています。銀行貸し出し約定平均金利は、数年来2%を切る状態で低迷しており、出 資法で規制する29.2%がいかに異常な高金利であるかは明らかです。  そして、一般市民においては貯蓄がなく、その収入も安定していない者が少なくな く、いまだ景気が全面的に回復しているとは言いがたい状況です。もともと、貸金業 者の顧客層は主として銀行や勤務先からの低金利による借り入れが困難な者であり、 また、収入が将来上昇する要素も限られている現状にかんがみると、生活を破綻しな い限度で可能な返済額は限られていると言わざるを得ません。したがって、病気・け が・その他突発的な資金需要のため、出資法の異常な高金利を前提に借り入れを受け れば、わずかな借入額であったとしても、その高利が家計を圧迫し、返済困難な多重 債務者に陥る要因とならざるを得ません。  したがって、早急に出資法の上限金利を引き下げることが必要です。 4 グレーゾーンの不合理性と「みなし弁済」規定の撤廃  他方、多くの貸金業者は、銀行等からの低金利を利用した資金調達やCM広告等に より、出資法の上限金利に近い高金利で貸し付けを行い、貸出願等を伸ばし続け、他 企業を凌駕する高利益を上げています。  このような高金利による貸し付けの背景には、出資法と利息制限法の2段階による 金利の規制といういわゆるグレーゾーンを設け、利息制限法の制限超過利息の支払い を一定の厳格な要件のもとに有効とする貸金業規制法第43条(以下、「みなし弁済規 定」といいます)の存在があると思われます。  しかし、前記のごとく、経済的弱者の立場に置かれた人々を暴利から保護する強行 法規である利息制限法の例外を認めるみなし弁済規定は、本来的に、その立法趣旨に 反する不合理な規定と言わざるを得ません。そして、同法の要件の充足については、 最高裁判所(とりわけ2006年〔平成18年〕1月13日判決)が債務者保護のために極 めて厳格な解釈を要求していますが、実際に同法の要件を満たして、利息制限法の制 限超過利息を要求している業者は皆無に等しいという状況にあります。  すなわち、私法上無効な利息の支払いを要求している業者が大多数であるという現 状にあり、みなし弁済規定の存在意義は、もはや認めがたいものであるとともに、金 利に関するグレーゾーンの存在は不合理なものでしかありません。  したがって、出資法の上限金利を利息制限法の制限金利まで引き下げを行い、金利 に関するグレーゾーンを撤廃するとともに、存在意義を欠くこととなるみなし弁済規 定を撤廃することが必要です。 5 日賦貸金業者等の特例金利の撤廃の必要性  出資法の附則において、日賦貸金業者(日掛け金融)及び電話担保金融については、 年54.75%まで認める旨の特例金利が定められています。  しかしながら、日賦貸金業者については、返済方法の多様化が進んでいる現在にお いて、集金による毎日の返済という形態にのみ特例を認める必要性はなく、また厳格 な要件を守ることなく違法行為が横行し、悪質な取り立ての温床となっているという 実情も存在します。  また、電話担保金融においても、もはや電話加人権の財産的価値が失いつつある現 在において、電話担保金融に特例を認める社会的・経済的な必要性は乏しいと言わざ るを得ません。  したがって、必要性が乏しく、むしろ高金利の徴収の口実として悪用される弊害が 大きい日賦貸金業者及び電話担保金融における特例金利の撤廃をすることが必要です。 6 保証料名目で利息制限法の潜脱を防止する必要性  債務者が名目のいかんを問わず利息制限法を超える金員を徴収されれば、利息制限 法の趣旨は没却され、上記改革も骨抜きのものとなってしまいます。しかし、貸金業 者の中には近時、実質的には同一の、あるいは経済的つながりのある別会社を利用し て、保証料名目で金員を徴収し、利息制限法の潜脱を図ろうとする動きがあります。 この点を防止する必要があることは明白です。 7 少額短期貸し付け等についての特例規定の阻止  以上の状況の中、出資法上限金利引き下げ問題は、国会に舞台が移り、7月6日自 民党及び公明党により、「貸金業制度等の改革に関する基本的考え方」が発表されまし た。同考え方では、金利問題については、@グレーゾーン金利の廃止 A原則として 出資法上限金利を利息制限法まで引き下げること B日賦貸金業の特例廃止という評 価できる方向性が打ち出されています。これは一連の最高裁判決及び金融庁「貸金業 制度等に関する懇談会」の「座長としての中間整理」の方向性にも沿うものでありま す。  ところが、その一方で、同「基本的考え方」には検討課題として、(ア)少額短期貸 し付け等について特例を設ける (イ)利息制限法の制限金利の金額刻みを見直す (ウ)利息制限法の制限金利を20%に一本化する、などという極めて危険な内容も盛 り込まれています。  (ア)においては、少額の上限額の定め方次第で、多重債務者の大多数の貸し付け がこれに該当し、上記の方向性は骨抜きにされる危険が高く、現にこのような働きか けを強めている貸金業界側の意図はその点にあると言えます。(イ)(ウ)においては 現行の利息制限法の上限金利の引き上げにつながり、上記の利息制限法の趣旨にかん がみれば、到底容認することはできません。  楽観的なマスコミ報道とは裏腹に、貸金業界の猛烈な巻き返しにより、出資法上限 金利の引き下げの骨抜きに加え、さらに利息制限法の改悪すら実現されかねない状況 が生じています。 8 弁護士会、司法書士会等の動き  以上の状況に基づき、日本弁護士連合会、日本司法書士会、その他東京三弁護士会 をはじめとする全国各地の弁護士会、司法書士会において、上限金利を引き下げる等 の意見書、会長声明、総会決議等が採択されているところであり、本請願もこの流れ のもとに、東京三弁護士会が連携して行っているものです。  また、各地においても、本年7月議会までに、東京都議会をけじめ計38の各都道府 県議会及び7月27日現在で849の市町村議会において同旨の請願が採択されていると ころです。  そして、日本弁護士連合会に続き、東京三弁護士会においても、「上限金利引き下げ 実現本部」を設置するとともに、この動きは既に全国の各弁護士会に広まっています。  上記のとおり請願いたします。