┌────────────────────────────────┐ │これは森てるおのホームページ用に参考用として掲載したものであり、│ │誤字、脱字等がある場合があります。正確なものを必要とする場合は、│ │西東京市ホームページ、または西東京市役所でご確認ください。   │ └――――――――――――――――――――――――――――――――┘ 請願第3号 「地方消費者行政の抜本的拡充に必要な法制度の整備及び財政措置を政 府等に求める意見書」の採択を求める請願 提 出 者 千代田区霞が関1−1−3                     東京弁護士会 会長 山 本 剛 嗣       千代田区霞が関1−1−3                   第一東京弁護士会 会長 村 越   進       千代田区霞が関1−1−3                   第二東京弁護士会 会長 庭 山 正一郎 紹介議員 浅 野 高 司  小 幡 勝 己  山 崎 英 昭 請願の趣旨  政府が進めている消費者行政一元化・強化の推進を踏まえ、政府及び国会に対し、 以下の事項を求める意見書を採択提出するよう請願する。 1 被害情報の集約体制を強化し国と地方のネットワークを構築し、消費者の苦情相  談が地方自治体の消費者相談窓口において迅速かつ適切にあっせん処理ができるよ  う、消費生活センターの設置、業務、機能等を法的に位置づけ、これに必要な法制  度を整備すること。 2 地方消費者行政の体制・人員・予算を抜本的に拡充・強化するための財政措置を  とること。 請願の理由 1 消費者被害の多発と消費者の不安  近年、食品の安全・表示の分野における食品偽装表示事件の多発や輸入冷凍餃子ヘ の毒物混入事件、製品の安全の分野におけるガス湯沸かし器一酸化炭素中毒事故やシ ュレッダー指切断事故、取引・契約の分野における次々販売被害、クレジット被害、 多重債務被害、投資詐欺商法、架空請求・振り込め詐欺事件など、消費者を取り巻< さまざまな分野で消費者被害が相次いでいる。  全国消費生活センターに寄せられる苦情相談件数は、1995年(平成7年)度が27 万4,076件であったものが、1998年(平成10年)度には41万5,347件、2002年(平 成14年)度には87万3,663件、2006年(平成18年)度には111万1,695件と、大 幅に増大している。2003年(平成15年)度から2005年(平成17年)度の架空請求 事案による相談件数の激増時期を除外しても、12年間に3倍〜4倍に増大している。  こうした消費者被害の増大に対する消費者の不安・不信は、健全な市場経済の発展 にまで悪影響を及ぼしていると指摘されている。 2 国の消費者行政推進と地方消費者行政の位置づけ (1)消費者行政推進会議の提言   このような中、政府は、消費者・生活者重視への政策転換、消費者行政の一元化・  強化の方針を打ち出し、「消費者行政推進会議」(以下「推進会議」という)を設置  し、2008年(平成20年)6月13日、「消費者行政推進会議取りまとめ」を発表し  た。   「取りまとめ」によれば、明治以来の我が国の行政は、各省庁が各領域の産業育  成を通して国民経済の発展を図ってきたが、消費者の保護は産業振興の間接的、派  生的テーマとして縦割りで行われるにとどまったことを指摘し、規制緩和など市場  重視の政策のもとでは、安全安心な市場の実現こそが公共的な目標として位置づけ  られること、そのためには行政の価値規範を「消費者の権利の尊重及び自立の支援」  に転換することや、縦割りの体制に対して消費者行政の一元化が必要であること、  などを提言している。 (2)地方消費者行政の位置づけ   その中で、「取りまとめ」は、「霞ヶ関に立派な新組織ができるだけでは何の意味  もなく、地域の現場で消費者、国民本位の行政が行われることにつながるような制  度設計をしていく必要がある。このため、新組織の創設をあわせて、地方分権を基  本としつつ、地方の消費者行政の強化を図ることが必要である」と、地方消費者行  政の重要性を明示している。   自民党消費者問題調査会の2008年(平成20年)3月19日付提言も、消費者庁の  新設と並んで、「地方消費者行政の充実」「相談窓口の一元化」を重要課題として位  置づけている。民主党の「消費者権利擁護官構想」も、国民生活センター及び消費  生活センターを消費者権利擁護官のもとにおいて情報集約することを想定しており、  地方の消費者相談窓口を拡充・強化することが消費者行政を強化する基盤であると  いう認識において、共通するものである。 (3)政府の消費者行政一元化の進行予定   政府は、推進会議の「取りまとめ」を受け、秋の臨時国会において「消費者庁設  置に関する法案」「苦情相談、情報集約、調査措置等に関する法案」「個別法の所管  (移管・共管)に関する法案」等を制定し、2009年(平成21年)4月にも消費者  庁を創設する、という意向を示している。 (4)地方消費者行政の充実に対する国と地方自治体の役割   「取りまとめ」は、「地方の消費生活センター及び国民生活センターを消費者が何  でも相談でき、だれもがアクセスしやすい一元的な消費者相談窓口と位置づけ、全  国ネットワークを構築する」、「窓口では、相談受付から助言・あっせん、紛争解決  まで、一貫して対応する」ことを提言している。   さらに、「地方の消費者行政部門の状況を見ると、予算は大幅に削減され、総じて  弱体化している。地方の消費者行政をこの1年〜2年の間に、飛躍的に充実させる  ためには、特に当面、思い切った取り組みが必要である」とした上で、「消費生活セ  ンターを一元的な消費者相談窓口と位置づけ、・・・法律にも位置づけを行うことを  踏まえ、国は相当の財源確保に努める」と提言している。   ただし、地方自治体自身が消費者相談窓口及び消費者行政を抜本的に拡充・強化  する取り組みがあってこそ、国の法制度の整備や財政支援が意味を持つものである  ことはもちろんであり、「取りまとめ」は、この点につき「地域ごとの消費者行政は、  自治事務であり、地方自治体みずからが消費者行政部門に予算、人員の重点配分を  する努力が不可欠である」と指摘している。 3 地方消費者行政の現状と背景 (1)地方消費者行政予算の推移   地方消費者行政の予算(都道府県・政令指定都市・市区町村合計)の推移を見る  と、ピーク時の1995年(平成7年)度が約199億円であったものが、98年(平成  10年)度には163億円、2002年(平成14年)度には149億円、2006年(平成18  年)度には116億円、2007年(平成19年)度には108億円と大幅に減少しており、  2007年(平成19年)度は1995年(平成7年)度に比べ約54% (約46%減)に減  少している。   消費者行政担当職員数(事務職員・相談員・技術職員合計)の推移を見ても、過  去10年間の中でピーク時の2002年(平成14年)度の1万3,664人から、2007(平  成19年)度は1万212人と減少しており、約75%に削減されている。   平成・年度   消費者行政予算(百万円)      行政職員数(人)        (都道府県)(市町村含む合計)(事務職員) 相談員   合計     7年度   12,694   19,992     9,453   2,335   12,004    10年度   9,971     16,379     10,172   2,383   12,768   12年度   8,898     16,539     10,296   2,676   13,174   13年度   8,031     15,609     10,342   2,918   13,458   14年度   7,962  14,999  10,397  3,061   13,664   15年度   6,359    13,101     10,093   3,144   13,409   16年度   6,428     13,034      9,253   3,314 12,710   17年度   5,676     12,211      7,873   3,342   11,359   18年度   5,158 11,605 7,113 3,732  10,957   19年度  4,606  10,830     6,572 3,539 10,212    減少率   36.3%     54.2%    63.2% 94.8%   74. 7%        ※内閣府消費者調整課資料から圓山茂夫隼教授が作成        ※減少率は、ピーク時に対する19年度の割合 (2)地方自治体における消費者行政の位置づけ   これについて、地方自治体全体が財政難であるから消費者行政予算・人員の削減  もやむを得ない、という意見も聞かれる。   しかし、地方自治体の一般会計予算の推移を見ると、過去10年間でピーク時の  2001年(平成13年)度が89兆3,071億円であったものが、2007(平成19年)度  には83兆1,261億円であり、約93% (約7%の減少)にとどまる。一般行政部門  の公務員数は、02年度を100%とすると07年度は91% (約9%の減少)となって  いる。   つまり、地方自治体の財政難に伴う予算・人員の減少幅に比べ、消費者行政予算・  人員の減少幅が異常に大きいことは明らかである。地方自治体の組織面においては  消費者行政の縦割りの問題は少ないといわれているが、予算・人員の措置を見る限  り、消費者行政は軽視されてきたと言うほかない。 (3)地方消費者行政の機能不全   地方自治体は、消費者から寄せられる苦情相談を専門的知見に基づき迅速かつ適  切にあっせん処理することが求められ(消費者基本法第19条第1項)、国及び都道  府県は、消費生活相談員の人材の確保及び専門性の向上に努めることが求められて  いる(同条第2項)。   ところが、近年、消費者トラブルが増大しているにもかかわらず、地方消費者行  政の予算・人員が大幅に削減されてきた結果、地方消費者行政の機能不全が深刻と  なっている。   例えば、消費者相談窓口は、消費生活相談員の配置人員の不足や、専門的研修の  不足などにより、時間と専門的知見を要するあっせん処理の割合が、1998年(平成  10年)度の9.17%から、2007年(平成19年)度の5.80%へと大きく減少している。   しかも、その消費生活相談員の地位が極めて不安定かつ劣悪である。解決困難案  件の紛争解決機関である苦情処理委員会はほとんど開催されていない。また、商品  テストの機器及び体制が大幅に削減された結果、商品事故の原因究明や品質表示の  比較テストがほとんどできない実情にある。消費者に対する啓発・教育や消費者団  体に対する活動支援も大幅に削減され、被害の未然防止を図る取り組みが困難とな  っている。        年度     相談件数     あっせん件数(割合)     98(H10)年度    415,347件  38,093件(9.17%)     99(H11)年度     467,110件  41,861件(8.96%)     00(H12)年度     547,145件  47,439件(8.67%)     01(H13)年度     655,899件  51,529件(7.86%)     02(H14)年度     873,663件 64,427件(7.37%)     03(H15)年度    1,509,884件  65,206件(4.32%)     04(H16)年度    1,919,662件 60,778件(3.17%)     05(H17)年度    1,302,177件 64,530件(4.96%)     06(H18)年度  1,111,695件 63,742件(5.73%)     07(H19)年度   1,038,090件  60,225件(5.80%)      ※国民生活センター:PIO−NET集計と、相談情報部資料から作成。      ※03年〜05年は不当請求・架空請求等の苦情相談が激増。 (4)消費者行政が後退した背景   地方消費者行政の人員予算がこれほどまでに縮小・後退した背景には、消費者行  政の法的位置づけが、他の行政分野では、例えば学校の教員や消防署員の定員を法  制化したり、一定の事業を法的に位置づけるなどの法的措置があるのに対し、消費  者行政分野では、地方自治体にすべてを任せるだけで消費生活センターの事業内容  や職員定員の確保に関する法制度の手当ても、それに必要な財政措置もほとんどな  されてこなかったことが指摘できる。 4 地方消費者行政の抜本的充実の必要性  地方消費者行政を抜本的に拡充し、真に機能する体制を実現するため以下のような 措置が必要である。  第1に、消費者相談窓口において苦情相談を適切かつ迅速にあっせん処理できるよ う、消費生活センターの設置、業務、機能等を法的に位置づけること、被害情報の集 約体制を強化し国と地方のネットワークを構築すること等、これに必要な法制度を整 備すること。  第2に、地方消費者行政の体制・人員・予算を抜本的に拡充・強化するための財政 措置をとること。  これらは、消費者行政推進会議の「取りまとめ」において提言されている事項であ るが、これを真に実現するためには、地方消費者行政の担い手である地方自治体から 国に対して、積極的に法制度整備や予算措置を求める意見を出すことが必要である。 5 結び  以上の理由により、貴議会において、政府及び国会に対し、地方自治法第99条に基 づき、請願の趣旨記載の意見書を採択されたく請願する次第である。