陳情第11号 東京都教育委員会委員長名の「教科書採択本務の改善について(通知)」       の無効性に関する陳情(平成13年3月19日受理) 提 出 者 文京区後楽2−16− 3 日本労働党東京都委員会委員長 秋 山 秀 男 陳情趣旨  2001年2月8日付東京都教育委員会委員長名の「教科書採択事務の改善について(通知)」は、 教科書採択に当たって各教育委員会が採択者であるように扱い、教師や学校の意向を無 視しようとしています。したがって、貴議会において即刻「通知」の撤回を求める決議 を上げるよう求めます。 陳情理由 1.本通知力は各教育委員会が教科書採択者であるように言っているが、教師や学校の  意向を排除しようとしている。これは、「97年通知」で教科書採択に当たっては学校  単位や、より多くの教員参加の方向での改革を提言していることを意図的に無視して  おり、決定違反である。   また、97年の閣議決定「規制緩和推進計画の再改定について」でも「将来的には学  校単位の採択の実現に向けて検討していく必要があるとの観点に立ち、当面の措置と  して、教科書採択の調査研究により多くの教員の意向が反映されるよう、現行の採択  地域の小規模化や採択方法の工夫改善について都道府県の取り組みを促す。」とある。  本通知はこの閣議決定も無視している。 2.本通知では90年通知にある「教職員の投票によって採択教科書が決定される等採択者  の責任が不明確になることのないよう、採択手続の適正化を図ることも重要である。」  ということばかりを強調しているが、逆に強調すべき点は「教科書発行者の過当な宣伝行  為等の外部からの影響に採択結果が採択されることのないよう、採択における公正確  保の徹底を図るための措置を講じる必要がある。」という点である。   現在の制度のもとでは教職員の意向を採択に反映させる方法として、「学校票」制度  があり、文部省も容認している。本通知によって「学校票」が無視されるなら、文部  省の考え方にも反することになる。教科書の選択は、教科書がそれぞれの教師、学校  独自の教育計画の中で活用されるものである以上、当然教師及び学校の自主的判断に  よってなされるべきであり、選択権は個々の教師または学校にあるのである。 3.各区市町村教育委員会が教科書採択者であると言っているが、法律23条6号は、教  育委員会は「教科書その他の教材の取り扱いに関すること」の「事務」を執行すると  いう規定をしており、教育委員会の基本的な仕事は教科書採択において、教師を中心  に採択が行われるよう条件を整えることである。したがって、教科書採択は教師を中  心に、保護者や子どもの意見も参考にしながら行われるべきものである。 4.教科書採択に当たって最も重要なことは、日本国憲法・教育基本法の精神を踏まえ  て作成されているかどうか、また教科書がそれを使用する学校・教師・子どもに適し  ているかどうかという点である。   本通知ではこの点を無視し、学習指導要領が「最もよく踏まえている教科書を選定  するなどの観点」としている。 しかし、採択の対象となる教科書はすべて検定済み教  科書である。文部科学省は教科書検定基準(学習指導要領を取り込んで作成)に則し  て検定を行っている。したがって、「学習指導要領が選定する観点」とする必要はない  のである。本通知は「例えば」として、中学校社会科・歴史分野の「歴史的事象に対  する関心を高め、我が国の文化と伝統の特色を広い視野に立って考えさせるとともに、  我が国の歴史に対する愛情を深め、国民としての自覚を育てる」などの目標を引用し  ているが、これは「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書に採択の道を開くことを  意識したものであり、絶対に認めることはできない。