平成12年陳情第1号  平成12年1月13日受理   東京地方・高等裁判所の裁判官の増員に関する意見書の採択を求める陳情書 第1 趣 旨  市民の適正かつ迅速な裁判を受ける権利を保障するため、東京地方裁判所及び東京高 等裁判所の裁判官を大幅に増員することを関係諸機関に求めるとの意見書を採択される よう陳情します。 第2 理 由  我が国の社会は急速に高度化・国際化が進み、それとともに法的な紛争も増大し、か つ複雑・多様化しています。このような法的紛争に対し、市民に身近で使いやすい解決 手段を提供し、適正かつ迅速に解決することは司法の重要な役割です。  21世紀の我が国は、規制緩和のもとに自己責任の原則にのっとった自由競争社会を 目指しています。その中で、透明性ある公正なルールに基づいた司法機能の充実に対し、 市民の期待が高まっています。ところが、裁判に対しては、解決までに時間がかかる、 十分な審理をしてもらえないという批判が多く寄せられています。これを早急に解決す る必要があります。  東京や大阪などの大都市の地方裁判所の民事裁判官が単独で担当している訴訟事件数 は約250件にも上っています。また、東京高等裁判所の民事裁判官が主任として担当 している事件数は、裁判官1人当たり約110件弱ですが、高等裁判所の事件は地方裁 判所において一度判決がなされた事件であり、一般に複雑で事件記録も多い事件です。  このような状況は、裁判官に過重な負担となっており、日本弁護士連合会が元裁判官に 対して行った調査でも、多忙さが証拠調べや判決に影響を与えるとの重大な結果が出て います。裁判官の多忙さは、市民の適正かつ迅速な裁判を受ける権利に大きな影響を与 えています。  裁判官の担当事件数の多さは、裁判官数の少なさに起因していることは明らかです。  昭和49年(1974年)と平成8年(1996年)を比較すると22年の間に地方 裁判所の民事事件数は62%ふえ、弁護士数は56%ふえたのに対し、裁判官の定員は わずか8.8%(168人)ふえただけにとどまっています。  もちろん、裁判官を増員するには、裁判所予算を増額する必要があります。しかし、 司法権は三権の1つであるにもかかわらず、国家予算に占める裁判所予算の割合は昭和 30年の0.9%から減少し続けており、現在は0.4%弱にすぎません。現在、東京 弁護士会は、司法改革運動の一環として、裁判官の増員を要求しておりますが、裁判官 の増員、裁判所予算の増加は、弁護士会だけの力によって実現できるものではなく、国 民的な運動が必要です。そして、国民的な広がりを持った運動とするためには、その裁 判所を利用する市民及び地方議会、自治体を含めた多方面からの声が不可欠であります。  つきましては、東京地方裁判所及び東京高等裁判所の所在地であります東京都内の責 議会におかれましても、ぜひ都民の声を代表して、地方自治法第99条第2項に基づき、 東京地方裁判所と東京高等裁判所の裁判官の増員を求める意見書を採択していただきた く、お願い申し上げます。  平成12年1月12日                     陳情者代表                       千代田区霞が関1−1−3                        東京弁護士会                        会 長  飯  塚  孝   保谷市議会議長     渡  部  保  男 殿