平成11年陳情第60号  平成11年12月3日受理    社会教育行政の正常化と図書館条例一部改正案の否決を求める陳情書 陳情趣旨  今回教育委員会から提出されている図書館設置条例の一部改正案を否決し、保谷 市の図書館政策の変更については、白紙から再検討するようにしてください。 陳情理由 1 このように急に改正する理由はありません。  地方分権一括法により図書館法が一部改正されておりますが、これらは、図書館 に関することは各地方公共団体において独自に検討し決定すべきであるという趣旨 の改正です。  また、保谷の現状は、これらの法改正と照らし合わせても何の問題もなく、緊急 に改正する埋由は何一つありません。 2 今回の条例改正案は、その作成過程で手続的に重大な問題を持っています。  今回の一連の社会教育関係諸条例の改正案は、保谷市教育中期計画の見直しとと もに、11月2日の教育委員会に突然提案され、わずかな審議の後に決定されてし まいました。その内容は、後述するように、保谷市としての図書館政策を大きく変 更するというものです。このような重大な政策変更を行う場合、社会教育法では、 市民の意見を反映して行うことを基本とし、合議制の「図書館協議会」と、独任制 の「社会教育委員」及びその合議機関である「社会教育委員の会議」の制度を定め ています。また、文部省の生涯学習審議会答申(1998年9月17日)でも、社 会教育行政を進めるに当たっては、これら住民代表機関を活用し、市民の意見を生 かして行うべきことが指摘されています。  しかしながら、今回の政策変更に当たっては、これら市民を代表する機関に対し て諮問はなされず、意見聴取の機会さえも与えられておりません。  さらに、本来これら重大な政策変更については、審議会等の市民代表の機関にお いて検討を行う中で、一般市民からの意見も取り入れて、よりよい政策を取りまと めるのが当然と考えますが、私たち一般市民は、意見を言う機会さえ与えられませ んでした。それどころか、今回市議会に陳情するに当たって教育委員会での議論を 知ろうとしても、議事録さえまだできていない状態です。  今回の政策変更案の策定過程は極めて異常なものであり、それに基づく条例改正 案は、市民を無視したものと言わざるを得ません。このような、不十分な検討で決 められた、かつ内容にも問題の多い条例案を拙速に制定することは、保谷市の将来 にとって大きなマイナスになると思われます。  市議会におかれては、この条例改正案を一たん否決し、もう1度、正常な状態で、 多くの市民の意見を反映し、広く一般の市民の合意を形成しつつ、よりよい社会教 育政策かつくれるようにしてください。 3 内容にも重大な問題を含んでいます。  条例案は、幾つかの重大な問題点を含んでいると思われますが、取り急ぎ、職員 の問題のみ御指摘申し上げます。慎重な検討をお願いいたします。  今回の改正案では、現行条例第4条2項(「図書館の館長、副館長、地域館長、 司書反び司書補は、法第5条に規定された資格を有する者でなくてはならない」) を削除することが提案されています。  提案の理由として、図書館法第13条3項が削除されたことが挙げられています が、これは国庫補助を受ける場合の要件を定めた規定であり、さきに述べたように、 この法改正により緊急に条例を変える必要は全くありません。  もともと図書館法は、改正前から、館長は必ず司書有資格者でなければならない とは規定していません。図書館法は、第10条で、図書館に関することについては 「……当該図書館を設置する地方公共団体の条例で定めなければならない」と規定 し、地方自治を重視して、各自治体ごとによりよい図書館の条件を検討し、決定す るように求めています。  文部省はその基本となる考え方を『公立図書館の設置及び運営に関する基準』 (平成4年生涯学習局長通知)にまとめていますが、その中で「館長となる者は司 書資格を有する者が望ましい」と述べています。図書館法は、館長については、立 法当初から、「図書館の専門家=司書有資格が望ましい」という精神を持っており、 それは今も変わっていません。  これらの事情に基づき、保谷市では、現行条例第4条2項を制定してきました。  館長、副館長、地域館長などの資格要件を廃止するという提案は、保谷市の図書 館政策を大きく変えるものです。図書館法の精神に反するほか、図書館の生命にか かわる変更と思います。  さらに、「生涯学習」の時代であればこそ、学習手段の一つとしての図書を有す る図書館が果たす役割は、市民にとって一層重要になってきており、そのためには 市民の学習を援助する立場で適切なアドバイスができる知識と見識を持った専門職 員の配置が不可欠です。これから迎える21世紀は、図書館にどのような職員を配 置できるかが、その自治体の教育・文化政策をはかる指針の一つになることは間違 いありません。館長には、図書館の専門家が必要です。条例改正に当たっては、む しろ、かっての規定(司書資格+実務経験5年以上)のように強化すべきです。  また、司書を正式に専門職発令せず、さらに事務職と同様に異動させようとする 動きもあると聞きますが、図書館の機能とその役割を考えるなら、専門職制度の確 立を図るべきです。  市民の税金で建設・管理・運営する公立図書館が、素人館長に素人職員では税金 のむだ遣いになりかねません。効率的な行政運営のためにも専門職制度を確立し、 館長には専門家を任命するよう要請いたします。            以 上   平成11年12月2日                  陳情者代表                   保谷市柳沢                    市民自治井戸端会議                    代 表 柳  田  由紀子  保谷市議会議長   渡  部  保  男 殿