平成11年陳情第61号  平成11年12月3日受理    社会教育行政の正常化と公民館関係条例改正案の否決を求める陳情書 陳情趣旨  今回教育委員会から提出されている公民館関係の条例案を否決し、保谷市の公 民館政策の変更については、白紙から再検討するようにしてください。 陳情理由 1 このように急に改正する理由はありません。  地方分権一括法により社会教育法が一部改正されておりますが、これらは、公 民館に関することは各地方公共団体において独自に検討し決定すべきであるとい う趣旨の改正です(このことは、文部省の生涯学習審議会答申(1998年9月 17日)でも明らかです)。保谷の現状は、これらの法改正と照らし合わせても 何の問題もなく、緊急に改正する理由は何一つありません。 2 今回の条例改正案は、その作成過程で手続的に重大な問題を持っています。  今回の一連の社会教育関係諸条例の改正案は、保谷市教育中期計画の見直しと ともに、11月2日の教育委員会に突然提案され、わずかな審議の後に決定され てしまいました。その内容は、後述するように、保谷市としての公民館政策を大 きく変更するというものです。このような重大な政策変更を行う場合、社会教育 法では、市民の意見を反映して行うことを基本とし、合議制の「公民館運営審議 会」と、独任制の「社会教育委員」及びその合議機関である「社会教育委員の会 議」の制度を定めています。また、文部省の生涯学習審議会答申(1998年9 月17日)でも、社会教育行政を進めるに当たっては、これら住民代表機関を活 用し、市民の意見を生かして行うべきことが指摘されています。  しかしながら、今回の政策変更に当たっては、これら市民を代表する機関に対 して諮問はなされず、意見聴取の機会さえも与えられておりません。  さらに、本来これら重大な政策変更については、審議会等の市民代表の機関に おいて検討を行う中で、一般市民からの意見も取り入れて、よりよい政策を取り まとめるのが当然と考えますが、私たち一般市民は、意見を言う機会さえ与えら れませんでした。  それどころか、今回市議会に陳情するに当たって教育委員会での議論を知ろう としても、議事録さえまだできていない状態です。  今回の政策変更案の策定過程は極めて異常なものであり、それに基づく条例改 正案は、市民を無視したものと言わざるを得ません。このような不十分な検討で 決められた、かつ内容にも問題の多い条例案を拙速に制定することは、保谷市の 将来にとって大きなマイナスになると思われます。  市議会におかれては、これら条例改正案を一たん否決し、もう1度、正常な状 態で多くの市民の意見を反映し、広く一般の市民の合意を形成しつつ、よりよい 社会教育政策かつくれるようにしてください。 3 内容にも重大な問題を含んでいます。  各条例案は、以下のような重大な問題点を含んでおり、慎重な検討を要します。 (1)「中央館方式」について  「独立館方式」から「中央館方式」への変更は多くの市民の意思に反し、19 97年3月28日に市議会で採択された「独立館方式・無料制度維持の請願」に も反します。  私たちは、「独立館並立方式」は、各公民館に対等の館長と運営審議会を置き、 各館相互に競争しつつ連携協力して、市の公民館事業全体のレベルを上昇させる 極めてすぐれた方法であると考えています。そして、「独立館並立方式」こそが 多くの市民の意向であることは、1998年3月20日の教育委員会でも確認さ れており、その維持が決定されています。 (2)公民館運営審議会の軽視について  公民館運営審議会に関し、今回の条例改正案における以下の諸点は、公民館運 営における市民意思の反映に重大な支障を来すと思われます。  ■「中央館方式」を採用し、公民館運営審議会を「中央館」だけに置くこと。  ■毎月の定例会議開催の規定を設けていないこと。  ■委員の要請による臨時会議開催を保障する規定を設けていないこと。  ■会議の定足数を定めていないこと。  ■委員の再任を「妨げない」とする現行規定を削除していること。  ■委員数を削減すること。  現在、公民館運営審議会が十分に機能していない地域もあるという問題が指摘 されています(文部省生涯学習審議会1998年9月17日答申)。しかし、保 谷市ではこのようなことは全くなく、各館に置かれた公民館運営審議会が毎月定 例に会議を開き、公民館におけるさまさまな事業(主催講座、施設設備の提供な ど)全般にわたって、市民の意向を公民館運営に反映させています。  公民館運営審議会がその使命を全うするためには、各館に配置し、少なくとも 月1度以上の会議を定期的に持つことが必要です。なお、隣の田無市においても、 「中央公民館」という名称ではあるものの、実際は独立館並立方式であり公民館 運営審議会も各館に置かれています。  また、必要に応じて臨時会を開催することは当然ですが、現規定(教育委員会 規則「保谷市公民館運営に関する規則』)にはある「委員の請求による開催」と いう条項が改正案にはありません。最近では、行政側が、社会教育法立法時の趣 旨に反して、公民館運営審議会の役割を極めて狭く解釈する傾向があり、ひばり が丘公民館では、館長が規則に反して独断で会議開催を中止するという事件も起 きています。「館長が認めない場合は会議を開けない」などということでは、市 民代表の調査審議機関という本来の機能を果たすことはできません。条例化すべ き事項です。定足数についても同様で、条例案には含まれていませんが、審議機 関としての公正性を確保するために必要と考えます。  今回の案には委員の「再任不可」ともとれる部分があります。他の自治体は、 公民館運営審議会の委員に「特定の人が長期にわたって在任する」「委員が男性 に偏る」といった問題を指摘されている例もありますが、保谷市では、市民参加 での公開選考のおかげで、このような問題は発生していません。教育委員会では、 この現実を無視して、「委員を2期務めたら永久に再任不可」という方針を打ち 出していますが、2期の間に公費を用いて研修と経験を積み識見を養った人を 「永久に再任しない」とは、税金のむだ遣いです。  委員数についても、現行の10名程度は必要と思われます。また、条例案のよ うに「9名以内」では、教育委員会の方針次第で何名にでも削減できることにな ります。明確に「定数は何名」と規定すべきです。もし委員の報酬が財政上問題 になるならば、報酬そのものを引き下げるべきです。 (3)職員について  今回の条例案では、「館長・副館長及び分館長を置き、主事その他必要な職員 を置くことができる」とされています。公民館には専門職員の配置が必要である ことは、過去の公民館運営審議会や社会教育委員の会議の建議や答申で繰り返し 要望されているはずですが、何ら反映されていません。  さらに、この案では、「置くことができる」のであって、「置かなくてもよい」 ということになります。市民の自治の能力を養い、地域づくりの中核となる公民 館職員には、単に施設の管理人としての仕事だけでなく、事業の実施及び団体へ の援助と連絡・連携といったさまざまな役割が課されています。  市民の学習活動は単に施設を開放して待っているだけではなかなか発展しませ ん。学習活動を企画し、市民の自主的活動を援助する地域に根づいた専門家の存 在が望まれます。そのためには、専任・専門・正規の職員の配置を規定する必要 があります。  公民館については、「独立館方式を維持する」ことが、1998年3月30日 の教育委員会で決定されています。わずか1年7ヵ月で基本方針自体が完全に変 わったことになります。きわめて無軌道な迷走で無責任であると言わざるを得ま せん。  また、緊急にここに指摘したことのほかにも、多くの問題点を含むと思われま す。公民館政策については、白紙に戻し、社会教育法の精神にのっとり、市民の 意見を聞く手続をとりながら、もう1度検討し直すべきであると考えます。                                以 上   平成11年12月2日                  陳情者代表                   保谷市柳沢                    市民自治井戸端会議                    代 表 柳 田  由紀子  保谷市議会議長   渡  部  保  男 殿