森てるおの議会報告 賛成・反対討論

 2000年4月臨時議会本会議における森てるおの賛成・反対討論をお知らせします。


 保谷市が田無市と合併することについての可否を住民投票に付するための条例
<賛成討論>

 議案第48号「保谷市が田無市と合併することについての可否を住民投票に付するた
めの条例」についてただいま展開された意見をふまえて、本条例案に賛成の立場から一
言申し上げます。

 本条例案は第1条にあるとおり「市民の意志を確認するため」という目的をもって提
案されたものであります。そして、第6条において市長に投票結果の尊重を義務づけて
おります。
 合併という行政行為は市民すべてが直接にその当事者であるという点から全市民に合
併することの可否を問うのは当然のことであります。行政担当者がそこに示された市民
の意志を尊重するのも、また当然のことであります。
しかしながら、行政担当者の頂点に位置している保谷高範市長は「本件条例の制定の
必要がない」とする意見書を提出しております。何が必要ないのか「市民の意思を確認
する」必要がないというのか、はたまた「市民の意志を尊重する」必要がないというの
でありましょうか。
 市長意見書にいう必要がないとする3つの観点のその1つについて、賢明なる議員の
皆さまにおかれましては先刻ご承知のことでありましょうし、まことに僭越なことと存
じますが。諸論の誤りについて申し上げます。
 市町村の合併、すなわち廃置分合を定めた規定は地方自治法第7条に存在しておりま
す。その第1項に「市町村の廃置分合または市町村の境界変更は関係市町村の申請に基
づき都道府県知事が当該都道府県議会の議決を経てこれを定め、直ちにその旨を自治大
臣に届け出なければならない」と規定されております。更に第5項において「第1項、
第3項及び前項の申請または協議については、関係ある普通地方公共団体の議会の議決
を経なければならない」と規定されているところであります。
これらの規定の意味するところは、市町村が廃置分合を都道府県に申請する場合には
議会の議決を経なければならない、ということであります。平たく言えば、「議会の同
意なく勝手に申請してはいけませんよ」ということなのであります。あくまでも「申請
する」という行為に及ぶ場合には議会の権能を無視してはいけない」ということであり
ます。市町村が、つまり市長が合併の申請を行うことを決めて初めて合併をしない、合
併の申請をしないという選択をした場合に議会がそれを覆して申請を行わせるまでの権
能を与えたものではないと私は考えるものであります。
 本件条例は市民意向の確認とその尊重を市長に求めたものであります。もし、合併に
賛成する市民が多数を占めれば、合併に向けての作業を更に大胆に進め、議会の議決を
経て東京都に廃置分合の申請をすればいいし、するべきであります。
 しかし、もし仮に合併に反対する市民が多数を占めた場合には、現在行われている合
併に向けた作業を中止すれば事足りるのであります。この場合、どうして議会の権能を
侵害することになるのだろうか。申請するという行為を前提とした議会への提案がなさ
れない限り、合併をどう扱うかは未だ市長の手の中にあるのであって、議会の権能の及
ぶところではありません。
 「合併に関する手続きを定めた法体系との整合性に基本的に欠ける」との市長の所論
について申し上げますが、合併は合併協議会の作業をもとに当該市町村が合併協定書に
調印し、これを議会に送付し議会の同意を得る。そののち、都道府県に申請を行い、都
道府県議会の議決を経て自治大臣に届け出がなされ、決定するという手続きになってお
ります。
 本条例案は合併協定書の作成以前の市長に対して求めたものであり、法体系との整合
性に欠ける」という所論には根拠がないのであります。
 更に意見書に言う「先行事例に議決事件を対象としたものはない」という部分につい
ても、合併のように市町村が申請することを決めて、そのことについて議会の議決が必
要になるのと同様、施設建設の推進を市長が決めても、当該施設にかかる公有地の売却
については議会の議決が必要となるというケースが前例として存在しております。申し
上げるまでもなく、当該施設建設を市町村が選択しなければ、議会の議決を必要とする
事態は発生しない本件と全く同じ事例であります。この点においても意見書の記述は誤
っております。

 地方分権推進委員会の第122回審議において、住民参加についての議論が交わされ
ております。「住民投票について拘束力を持つものとするなら、その対象を合併など地
域的なものに限定する必要があるのではないか」「軽々しく住民投票の導入を扱うべき
ではないが、合併や住民総会の設置のような問題は最終的には住民の意思に委ねるのが
相応しいのではないか」
「市町村では基礎的団体として住民に身近な行政を担っていることから住民投票にな
じむものもあるが、都道府県では広域的な団体としての行政を担っていることから住民
投票になじまないものが多く、都道府県と市町村を分けて考える方がよいのではないか」
こういった意見が出されており、総じて市町村の問題や合併の問題は住民投票という方
向での議論が行われています。
 第145国会の衆議院行政改革に関する特別委員会においては、自由民主党の水野委
員の「住民投票を通じて地域のことは地域住民が決めるというふうになることこそ本当
の地方分権じゃないかと思う」「市町村合併なんかの場合には今住民発議制度だけあり
ますよね。だけれども、地域の問題ですから住民投票による承認とかがあってもよろし
いんじゃないか」という質問に対して、野田自治大臣は「住民自治ということ、つまり
地域のことは地域の責任において決すべきであるという事柄と、それから住民投票に法
的効果を与えるべきであるということは必ずしも同じ性質のものではない。ただ、住民
として非常に関心の深い、そういうテーマについては大方の住民の意向あるいは動向を
知りたい、それを参考にしたいという意味で条例において住民投票を現実実施している。
そのこと自体は別段今日の法制度の中で禁止をされてはいない」と答えており、市長の
意見書の所論の第1「合併手続きを定めた法体系との整合性に基本的に欠けている」と
いう部分について、少なくとも自治大臣は整合性はあると言明しているわけであります。
 更にこの自由民主党の水野委員は「僕は何も合併が悪いというわけじゃないんだけれ
ども、決定権、つまりブレーキを踏むのもアクセルを踏むのも自由に住民に決定させる
ということこそ真の地方分権であり、住民自治というものじゃないかと考えるわけでご
ざいます」と述べています。私の考えていることと全く同じであります。
 市長が本件条例案に対して、意見書所論の末尾において、「法制度上の観点からも実
務上の観点からも積極的意義を見出すことができない」と述べていることは、私が今回
指摘した諸点を踏まえるならば、何の説得性も持たないものであることは明白になった
のではないでしょうか。

 次に所論の2番目、合併特例法に関連した部分について言及いたしておきます。
 合併特例法は第1条において「市町村の合併について関係法律の特例その他必要な措
置を定めるものとする」とその趣旨が述べられております。合併の推進を法的にバック
アップするための法律であって、その一つとして合併協議会の設置を住民発議によって
請求できるとした第4条以外は市民との関わりが記述されている部分は存在しないので
あります。協議会に議員を加えても東京都職員や住民からなる学識経験者を加えたとし
ても住民投票を必要ないとする論拠にはならないのであります。
 そればかりか、協議会自らが住民の意向を投票という一人一票の方法で確認する必要
を認めているのであります。それならばなぜ住民投票を否定し、必要がないとするのか
この理由が明確に示されておりません。住民投票はやる必要がない、しかし住民の意向
調査はやる必要があるというのは論理の矛盾であります。なぜ住民投票はやる必要がな
くて「住民の意向を確実に把握することが当然の任務」と主張しているのであれば住民
投票はその有力な選択肢となるのであります。
 合併協議会の中で住民の意向調査の調査方法として示された5つの案の中に住民投票
が含まれていたことは当然であります。そして合併協議会の協議では市長の意見書の所
論の1・2に触れた議論は展開されておらず、ましてや住民投票は必要ないという議論
は行われていないのであります。合併協議会の議論を踏まえない市長独自の見解に過ぎ
ません、非常に根拠の薄い主張であります。

 さて、住民投票は必要がないとする論拠の第3である「投票方式による全有権者アン
ケート」という住民意向調査の調査方法についてであります。このアンケートの内容を
もって住民投票が必要ないと言われているものであろうとして論考を加えておきます。
 この「投票による全有権者アンケート」の特徴点として3点が挙げられています。第
1に有権者を18歳以上とする、第2に合併の賛否に合わせて新市の名称、新市に期待
する施策を設問としている、第3の投票時間の延長や不在者投票の要件緩和がその中味
であります。
 本条例案は第6条にいう市長の尊重義務を明確にするために公職選挙法上の有権者の
解釈を採用しているのであって、18歳にとどまらず16歳以上ということであっても
別途または副次的に意向確認を行うことを否定しているものではないのであります。大
いに調査は行うべきであります。
調査項目を合併の賛否に加えて2点を追加したことをもって自己賛美をしていること
についてでありますが、新市つまり合併を展望して加えられたこの2点の質問こそが、
皮肉なことに、このアンケート方式の最大の欠陥となっているのであります。
 合併という行政行為は市民すべての参加、参画を可能とする、あるいはそれを保障す
る形で行わなければならないのであります。しかし、合併についての市民の多数意志が
市民の目に見えないまま、市の名前や新市に望む施策を募集しても合併を望まない市民
は答えようがなく、結果的に合併に賛成あるいは期待する市民だけが応募することにな
ります。
 市長は合併に賛成あるいは期待する市民だけで市の名前も市の将来も決めてしまって
いいと考えているのでしょうか。このような設問を賛否とともに行うことはその結果と
して市民を将来にわたって分断し、政治不信を引き起こし、行政への市民協力を阻害す
る大きな要因を作ることになるのであります。まず、賛否を問えば、市民はいずれであ
れその結果を納得し、受け入れることができるようになります。合併の賛否がこうして
明らかにされ、仮に合併すべきとする市民が多数を占めたならば、合併に否定的だった
人も市の名前や新市への希望を述べることができるようになり、市民融和と行政への市
民協力の基礎が作られるのであります。まず、合併への賛否をそれ自体として問うべき
であって、このアンケートのような調査項目の設定は謝りであります。
 投票時間については、先の選挙から延長されており、要件の緩和が行われている不在
者投票と組み合わせれば現在の選挙法の規定によって市民意思確認のための方法として
は3に述べられている方法と遜色ないものであります。
以上の通り3点についての比較検討を加えてみれば住民投票の必要性が減じるどころ
か、とりわけ第2の点において必要性が再確認できるものであります。
 本件住民投票条例を可決して住民投票を実施し、合併の方向性が確認されるのならば、
すべての市民に対してアンケートを実施すればいいのであります。アンケートを全国に
例を見ないという鳴り物入りで行う必要があるのは賛否を問うという内容が含まれてい
るからであります。この一点を住民投票という形で抜き出してしまえば、ただのはがき
あるいは調査用紙を使った任意のアンケートで充分であります。この点からしても、住
民投票が必要がないとの市長の所論については、理解に苦しむ所であります。

 本件条例案は8738名の有効署名数をもって提案されております。実署名数9100名をさ
して「私は少ないと思います」とは市長の感想でしたが、有効署名数においても、有権
者の10.5%が条例制定に賛成しているわけであります。この人数については署名者が有
権者に限られるという点も加味して考えると、新市の名前を募集したときの8700通より
もはるかに大きな数であります。学校で配布した応募用紙で子どもたちに応募を呼びか
け、重複することも可能で、景品も付けて、しかも全国からということで行われたもの
であり、その結果としての8700通でした。これに対して、住民投票の方はあの寒い一時
期の1ヶ月間に保谷市の有権者だけから一人1回の制限の下、景品という反対給付なし
に集められた数であります。ちなみに田無市で集められた有効署名数と合計すれば18,
199名にも上ります。この数を応募はがきの8700通と比較すれば両市民の、当然保谷市
民の住民投票を求める民意の高さは疑うべくもありません。

 住民投票を実施するべきであります。市民合意を築き、自分たちの街の未来を責任を
もって市民に担ってもらうために住民投票を実施するべきであります。

 以上、私が申し述べましたことをご理解くださった上で、本件「保谷市が田無市と合
併することについての可否を住民投票に付するための条例」案に賛成してくださるよう
に呼びかけまして、私の賛成討論といたします。


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